第18回 キリスト教文化講演会

 当教会では、毎年秋に、キリスト教の福音における「いのち」の回復を願い、「ホスピス」「看護」「老い」「生死」「教育」などを課題に取り上げ、キリスト教文化講演会を開催してきました。第18回目を数える本年9月9日(日)の講演会では、特に「教育の源にあるもの」をテーマに取り上げます。今回の講師は、長年、思春期の子供たちの教育の現場に携わってこられた安積力也先生(基督教独立学園高等学校 前校長)をお招きし、「何が人を『私』にさせるのか―独立学園から見えてくること―」と題した講演を伺います。先生方、学生、生徒の方がた、特に保護者のみなさまに広くご参加いただきたく、ここにご案内申し上げます。

 

講師のことば

「待てない」時代になった。「できるだけ早く、目に見える成果を!」。この巨大なうねりの中で、私たちは、親も教師も官僚も為政者も、「待つ」力を失ってしまった。今、この国の子供たちが異様なほど「素直」です。なぜ「異様」か。それは「”私”のない従順さ」だから。”私”になろうともがく若者の自死率は、高止まりのままです。子供を「信じて待つ」ことによってしか育たない”大切なもの”がある。東北の小さな全寮制高校から見える「人間教育の事実と真実」をお話しすることで、子育てや教育で苦闘中の方々に、ささやかなエールを送れればと願います。

講師プロフィール

安積力也先生は、1944年生まれ。1972年、国際基督教大学大学院教育学修士課程修了(教育哲学専攻)。同年、新潟の私立敬和学園高等学校の社会科教師となり、90年に同校教頭。91年、東京・町田市にある日本でただ一つの日本聾話学校に招かれ、95年、同校校長。2000年より、東京・世田谷区にある女子中高一貫校、私立恵泉女学園の校長。2008年、山形県小国町の山ふところにある私立基督教独立学園高等学校(内村鑑三の信仰精神に立つ生徒70余名の全寮制高校)に校長として赴任。そして、2015年 3月、43年間の教員生活を終え、教育現場から引退されました。

著書他

安積先生の著書には、2007年に、岩波ブックレットとして出版された『教育の力―「教育基本法」改定下で、なおも貫きうるもの―』(岩波ブックレットNO.715)があります。2006年に「教育基本法」が改定されました。教育現場では、「教育の原理」よりも、「市場原理」や「国家主義」の原理が浸透し始めています。その中にあって、安積先生は希望を見失わず、「旧教育基本法」前文にあった「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」という「教育の原理」を今こそ手放すべきではないと、静かに力強く説かれます。今回は基督教独立学園高等学校での貴重なご経験を元に、教育の原点に触れるお話を聞かせていただけると思います。

NHK「こころの時代 ~宗教・人生~ 待てない時代にどう育てるか~人間教育を支えるもの」の放映は大変好評で再放送されました。また日本聾話学校に関する先生のお話は『難聴児に教えられて』(NHK「ラジオ深夜便」CD セレクション)にも収められています。来る 7 月 29 日(日)8:30~9:00 NHK ラジオ第 2 放送「宗教の時間」にインタビュー「自分を裏切らない言葉を求めて」が放送されます(再放送 8 月 5 日(日)18:30~19:00)。